<略歴>
神保太樹(Daiki Jimbo)
トリノ大学医学部客員教授、愛知医科大学非常勤講師、日本アロマセラピー学会副理事長、日本健康応用医学会理事、日本補完代替医療学会幹事等を歴任し、
脳における嗅覚の認識経路を応用した脳リハビリテーションの技術開発や、認知症の新しい診断・治療アプローチなどを開発し、実用化してきた。
様々なメディアを通して脳神経健康科学の普及を目指している。
ハーブなどから香りを抽出する方法はさまざまです。
最も多いのは水蒸気蒸留法と呼ばれる加熱した蒸気を、素材の隙間に通すことによって成分を分離させる方法です。
この方法は装置の構造が比較的単純であり、また大規模な抽出器も作りやすいということが利点です。
しかし、香り成分の中には熱に弱いものもあります。例えばラベンダーでは、加熱によってリナロールや酢酸リナリルが減少しますし、オレンジスイートなどの柑橘系でもリモネンが減少することが知られています。
この為、熱に弱い成分が構成要素となっている香りについては、水蒸気蒸留以外の方法が試されています。
例えば同じ水蒸気蒸留法であっても、高圧化では水蒸気の温度が下がることからある程度熱に弱い成分が守られます。
また常温下で精油を得る方法もあり、果皮などの成分を絞る圧搾法や、エタノールなどの溶媒に原料を漬け、その後溶剤を除去する溶剤抽出法があります。このうち、特に溶剤抽出法は、素材の収率が比較的優れており、アンバーグリスなどの貴重かつ熱変性に弱いとされる原材料によく用いられています。
機能性面からみると、前述の例を挙げると、加熱によってリナロールのようなリラクゼーション成分が減少してしまうわけですから、そうしたものについても非加熱抽出が望ましいと考えられます。
また香りを楽しむという観点でも、特に溶媒抽出法では経験的に常温によって抽出を行ったほうが、高品質なものとなるとされています。(アンバーグリスにおいても、非加熱抽出のほうが、品質が良くなるだろうという文献もあります。)
以上のように、非加熱抽出による各種の精油やチンクチャーは魅力的な選択たりうると思われます。特に素材に注目して、非加熱抽出の香りを楽しんでみてください。
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